当科の特徴

当科は肝臓・胆道・膵臓の疾患に対する手術治療を専門的に扱う部門です。肝胆膵外科は消化器外科分野の中でも特に難度が高い手術を多く扱う分野であり、また悪性疾患が多いことから診断・治療に高い専門性が要求される分野でもあります。

私どもの施設では肝胆膵外科高度技能専門医資格もしくは内視鏡技術認定医資格を有する2名の指導医と肝胆膵外科の専門的トレーニングを終了した2名の専門医が在籍し、高難度腹腔鏡下切除を含め現在本邦で行われている肝胆膵外科手術のすべての術式を遂行することが可能です。昨今さまざまな医療安全上の問題が指摘されたように、肝胆膵外科は心臓外科と並び、リスクの高い手術を扱う分野です。治療は何よりも安全を優先しますが、他院で断られた進行癌やリスクを伴う高難度手術でも治療によって予後の改善が見込める可能性がある場合、また治療上の工夫により安全に治療が遂行できる可能性が高いと判断される場合は、関係各科との密な連携の上、手術をお引き受けしています。

臨床の考え方は施設や医師によってさまざまであり、どれが正解でどれが誤りということはありません。しかし、臨床における判断は、患者さんの人生を大きく左右する可能性があります。私どもは常にそうした意識を持ち、常識で「できる・できない」ではなく、何が最善のアプローチかを患者さんとともに考え、「諦めない」外科治療を主義としています。国内外に関わらず広くセカンドオピニオンを受け入れておりますので遠慮なくお問い合わせ・ご相談ください。

我々の強み

1.患者さん個人に合わせたベストな治療を追究していること

肝胆膵がんは難治がんの一つであり、根治を目指すためには一度の治療で終わりということはむしろ少なく、将来的な追加治療の可能性を視野に入れた治療の選択を行うことが重要となります。肝胆膵がんに対する治療法は様々存在していますが、誤った治療選択がその後の治療を困難としてしまうことがあり得ます。がんの大きさ、数、場所、臓器の機能によって適した治療法は異なっており、目新しい治療法が必ずしもよい結果をもたらすわけではありません。がんに対する夢の治療法はありませんが、適切な治療の選択によって長期生存や根治を期待することは十分可能です。当科では個々の症例の治療方針はすべて、内科(肝臓内科・消化器内科・臨床腫瘍科)、外科(肝胆膵外科)、放射線科、病理部を中心とする診療チームの合同カンファランスで決定しており、内科だからラジオ波や抗がん剤、外科だから手術といったような偏った臨床判断がなされることはありません。ベストな治療アプローチを専門家が集まって議論し、集学的治療を追究することにより、世界に誇る治療成績をおさめています。

2.スタッフの手術経験が豊富であること

当科は2名の指導医 (進藤医師(肝臓外科担当部長)・橋本医師 (胆膵外科担当特任部長))ならびに2名のスタッフ医師がそれぞれの専門領域を生かし、主治医としてすべての手術に参加する体制で年間約600件の肝胆膵外科手術を行っております。外科医一人当たりの執刀件数では本邦のhigh volume centerの中でも群を抜いています。現在の診療体制となった2015年以降の肝切除・膵切除件数は年間250-300件前後で推移しており、そのうち約半数が肝胆膵外科高度技能手術に相当する高難度手術です。肝切除術・膵切除術ともに腹部外科手術の中でも高度の技術を要する手術ですが、各スタッフが豊富な経験を有しているとともに、麻酔科、ICU、病棟もそうした手術の管理に慣れている点が当院の大きな強みです。年間の手術症例数はこちら

3.治療までの時間が早いこと

当院では麻酔科、手術室の協力のもと、手術枠にとらわれることなく迅速な治療を行っています。合併症のない通常の肝切除や膵切除の場合、術前精査開始から最短7-10日前後で手術を行うことが可能です。治療待機日数はほとんどありません。

4.周術期管理が徹底していること

手術はもちろん、術前、術後管理については当院の豊富な臨床データに基づき適宜工夫・改善を図っており、合併症に関しても総合病院の利点を生かした迅速なサポート体制ができています。周術期管理は2名の指導医以下、肝胆膵外科部門スタッフである松村医師、大久保医師が消化器外科の4チームを統括し、綿密な管理を行っています。当院は他院と比較して単純な肝胆膵外科手術が少なく、高度肝機能障害を伴う症例や脈管合併切除を要する高難度手術が多い特徴がありますが、術後合併症率、周術期死亡率は同等の術式に対する全国平均を大きく下回っています。