治療実績

当科は肝胆膵外科のhigh volume centerとして本邦有数の症例数を誇ります。肝胆膵外科領域における年間の総手術件数は約700件。うち300件前後が肝胆膵の悪性腫瘍(がん)に対する切除です。肝胆膵がんに対する標準的な治療はもちろん、高度進行癌や併存疾患を有するハイリスク症例に対しても、総合病院としての利点を生かし、専門各科との密な連携のもと手術の安全性と根治性を追求しています。特に肝胆膵疾患の治療においては、肝臓内科、消化器内科、臨床腫瘍科、放射線科、病理部と定期的なカンファランスを開催し、高度集学的治療センターとして個々の症例に合わせた適切な治療を追求しています。

肝切除術

肝胆膵がんの治療における当科の強みの一つは、原発性肝癌、転移性肝癌に対する豊富な肝切除術の経験と治療体制です。2015年以降、肝臓内科、下部消化管外科との密な連携のもと、進行がんに対しても必要に応じて化学療法やその他の治療法を組み合わせた集学的治療の提供体制を確立し、同時に多くの臨床研究を通じて従来の周術期管理や手術リスク評価法を見直し、手術の安全性と根治性を常に追求しています。特に近年では積極的な腹腔鏡手術の導入により手術による侵襲をできるだけ低減する試みに力を入れており、安全性と根治性を担保しつつ、なるべく体への負担の少ない外科治療の提供を目指しています。現在全症例の約2/3が腹腔鏡下または腹腔鏡補助下での手術となっており、2023年からはロボット支援下手術を導入しております。

膵切除術

膵臓外科分野は膵がんや神経内分泌腫瘍(NET)をはじめとする膵悪性腫瘍、膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)などの前がん病変を有する患者数の増加を反映し、膵切除件数は年々増加しています。膵切除においても安全性と根治性が担保できる条件下であれば可能な限り腹腔鏡下手術を選択しています。2023年は全症例の約5割が腹腔鏡下またはロボット支援下での切除となっています。

胆嚢摘出術

胆嚢摘出術は主に胆石症、胆嚢ポリープなどの良性疾患、胆嚢炎に対する根治的治療として消化器外科分野において最も多く行われている肝胆膵手術の一つです。1990年に本邦で腹腔鏡による胆嚢摘出術が始まり、現在では世界的な標準治療となっていますが、当科でも同年から腹腔鏡下胆嚢摘出術を採用し、年間の手術件数は300-350件と本邦で最も症例数が多い施設の一つです。胆嚢摘出術はありふれた手術の一つである一方、結石の陥頓や高度の炎症を伴うケースでは難度が高く決して安全な手術というわけではありません。当科では消化器内科(胆膵グループ)との密な連携のもと、複雑な症状・合併症を有するケースでもできるだけ低侵襲かつ安全な治療を心がけています。