治療の考え方

手術適応は基本的に各疾患のガイドラインに準じて決定をしていますが、進行癌でも外科的治療の効果が期待できるケースについては安全性を第一に可能な限り切除の可能性を追求しています。がんで手術が必要なケースについては適切な状況下でできる限り早期に手術を行います。術式によっては腹腔鏡の使用によりなるべく体に優しい治療法の選択を行っていますが、がんの手術においては安全性と根治性を再優先し術式を決定します。

肝悪性腫瘍(原発性肝癌・転移性肝癌)に対する治療

原発性肝癌については肝臓内科との連携のもと、基本的に「肝癌治療ガイドライン」に基づいた治療選択を行います。当院は原発性肝癌の切除件数が年間120-150件と本邦で最も多い施設の一つであり、豊富な経験に基づき独自の切除安全基準を用いています(拡大幕内基準, Kobayashi Y, et al. HPB 2019)。Child B, C症例でも腹腔鏡下切除やHassab手術・シャント結紮術などの先行、あるいは内科的治療の介入によって安全に切除な可能となる症例が存在しますので、可能性を追求し、諦めない肝癌治療を行っています。転移性肝癌については、進行しているケースでも化学療法との適切な組み合わせによって根治もしくは長期生存が期待できるケースが多数存在しています。精緻なリスク評価と集学的治療の2本柱により、高リスク・高度進行症例においても安全かつ根治性の高い外科治療を心がけています。
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胆道悪性腫瘍(胆嚢癌・胆管癌)に対する治療

胆道癌は正確な診断に基づく切除範囲の決定が必要であり、また黄疸や低栄養の存在下で肝臓・膵臓の合併切除を伴う大手術を必要とするケースが大部分であるため、肝胆膵がんの手術の中でも特殊で周術期死亡リスクの高い術式を必要とします。当科では周術期のリスクの低減のため、消化器内科をはじめとする関連各科と協力し、必要に応じて門脈塞栓術、内視鏡下での胆道ドレナージ、栄養介入などの術前治療を通じて、安全かつ根治性の高い手術を追求しています。

膵悪性腫瘍(膵癌)に対する治療

膵癌は難治癌の代表であり、基本的には化学療法(術前 or 術後)との組み合わせによる切除が必要となります。肝胆膵キャンサーボードでの検討を通じ、切除可能な膵癌に対してはできる限り早期の切除と術後補助化学療法、切除による根治が疑わしいケースでは術前治療による切除の意義の見きわめを行い、最も適切と考えられる治療法を選択しています。